2014年7月18日金曜日

新・相生橋 OBだより97号(2014年4月1日号)掲載

森羅万象の生命がいっぱいに広がり、新しい芽がふくらむ「張る」が語源の春がめぐってきた。自然が躍動する「春」である。「野に出れば人みなやさし桃の花」(素十)の句が、岡山の里山の風情にはよく似合う。前号で約したとおり、生命と健康について記す。

 春ほど待たれる季節はない。北欧の諺に「春の山は笑う。(夏以下略)」とあるが、心なごむ春である▼一方、人の誕生ほど待たれ、喜ばれることもない。OB諸氏にも孫の可愛さは、比類なき存在であると思う。その生命は何歳まで生きられるかという長寿は、古来から謎であったが、ソ連生命科学院が一九三四年「人間は、最適な生活習慣の下であるならば一二五歳説」を公表して以来、これが定説となっている▼この説は、いわゆる「足し算・引き算説」である。例えば、生活習慣の中で、深酒をした、肥満になった、過重労働した等の体に負荷を与えると一二五歳から引き算される。又食養生、快適さが足し算されるとの考え方である。今様の言葉で言えば、クオリティオブライフ(QOL)の実践が限りない健康寿命の享受である▼人は、六十兆の細胞で形成され、老化現象は、ひとつひとつの細胞が壊れて、四十兆の細胞になると死を迎えるとの学説が定説となっている。健康教育学では、知・徳・意を司る脳細胞(十四兆)を如何に活性させ働かせるかが、健康で長寿を全うさせることの理論と実際を説いている▼長寿と短命の職業を調査した文献があるのでその一例を紹介する。長寿者は、古典音楽家・宗教者・絵画と書道家、短命者は、スポーツ選手・力士・不定期労働者であった▼長寿者の中でピアニストと指揮者が顕著とされている。ピアニストの日常は、長時間毎日指を連動練習する。複雑微細巧妙に記された楽譜を脳が読み(暗記させる)これを指に伝える。その音色を脳細胞が感受していくことの連続である。脳細胞の働きが指に伝わり、指の動きが脳細胞を刺激する連続である▼最近PPKということばが、医療界で関心が寄せられている。「ピンピンコロリ(健康で寿命を全うする)」という意味である。健康寿命を別の表現をしている。最新の数値歳年を参考に記すと、男性は七十・四二歳、女性は七三・六二歳である。OB諸氏PPKでありますように祈ります。

(次号は「日本人の感性と文化」を予定)(R・T)